福島第一原発の溶融燃料が地下深く沈降していなくてもセシウム、ストロンチウムはどんどん海に溶け出している

2014年11月27日 福島第一原発地下の水はどこから来てどこに行くのだろう のフォローアップ記事

 
次の図は、福島第一原発事故 原発に関する図や仕様などの羅列 2011-04-29 12:25:11の記事に掲載されていた図に筆者がOP0mのラインを書き込んだ。


O.P.とは、Onahama peilの略で 小名浜港工事基準面と呼ばれる。東京ならT.P.だ。そこの海抜ゼロメートルの高さを示すと考えてよいだろう。ただ、「3.11東日本大震災後の日本」の記事「福島原発の汚染水をよく知るため、O.P.とサブドレンを理解しましょう」によると、「福島第一原発付近では、平均水位はO.P.0mではなく、O.P.+0.828mだそうです」と書かれている。満潮ならさらに上がる。

O.P.0mの位置を知るために、C、OP10mの位置からAB間の高さ8.5m分を下に下げるとD、OP-2.06mの位置との間を取ってO.P.0mは赤い横線の辺りになる。格納容器の底のすぐ下だ。

次の図は、ふじふじのフィルター2012年1月21日 (土)の記事に掲載されていた画像をカットして掲載している。元は、【原発】燃料の状態は・・・格納容器に初めて内視鏡(12/01/19) のようだ。

小出裕章氏は、2014年11月21日のラジオフォーラムで次のように述べている。

「国や東京電力はとても楽観的な見通しを立てているわけです。例えば、溶け落ちた炉心は、原子炉圧力容器の底を抜いて下に落ちたわけですけれども、落ちたところは、私達がペデスタルと呼んでいる部分で、その床の上に饅頭のように堆積しているというのが、国や東京電力の描いている絵なのです。

しかし、そんなことは到底ないと私は思っています。ペデスタルと呼ばれている部分には、人間が出入りするための出入り口があるのですけれども、どんどんどんどん水を入れてきたわけで、その水はその出入り口から外にどんどんどんどん漏れていってるわけですし、溶け落ちた炉心も、その水の流れと一緒に格納容器の外部に、ペデスタルの外部に流れていってるはずですし、そうなってしまいますと、格納容器の壁と接触してしまって、すでに、その格納容器の壁を貫通しているかもしれないという、そういう状況になってるはずだと私は思います。
ですから、国や東京電力は、いつの時点か圧力容器の上の方から、その下に饅頭のように溜まっている溶け落ちた炉心を上に掴み出そうとしているわけですけれども、その場所には実はない。そこにあったとしても、何割かがあるだけであって、何割かはもう外に出てしまっていると私は思いますので、掴み出すということはできないだろうと思います。」

溶融燃料が格納容器の底を抜けていることは事業者はまだ認めていないようだ。だが、原子炉建屋の地下には地下水が流入し、地下水は海に抜けている。溶融燃料が OP 0mの地点まで下がっていれば、流入した地下水は溶融燃料に接するだろう。逆に海から海水が流入することもあるだろう。

上に引用したように福島第一原発付近では、海の平均水位はO.P.0mより約1mも高い。ペデスタルのコンクリートの底部はOP1.5mもないかもしれない。地震で地盤が下がっているかも知れない。

事業者は、地下水動向を完全には把握出来ていないし、建屋内と地下水の行き来は壁や貫通部だと決めつけて作業を進めているが、建屋地下の床や基礎部を通って行き来している可能性もあり、その場合には凍土遮水壁では地下水流入は完全に止まらないのではないかとの見解もある。水が行き来すれば、セシウムやストロンチウムは水溶性だから、どんどん地下水や海水の中に溶け出してくる。

2014年11月09日 F1で何が起きているか 質問があったから用心してもらうために敢えて書くで述べたように、筆者は、溶融燃料が地下深く沈降し、深いところを流れる地下水と接触して高温の水ないしは水蒸気となって陸上ないしは海面上に出てきていると考えるが、そのような事態を想定しなくとも、かなり早い時点で、地下水あるいは海側から入った海水が溶融燃料と接していたことは、ほぼ間違いないのではないか。 

連日のように夜半、福島第一原発事故の沿岸に航空機が飛来している。宇宙人が見かねてやってきたのかと思ったが、そうではない。サーモグラフィで海水の温度を測定しているのだろう。特別に温度上昇が見られないと言うことの確認だけなら連日の観測は必要性がない。福島第一原発の事業者は、毎日、溶融燃料の発する唯一のシグナルをヒヤヒヤしながら見ているのではなかろうか。

なお、小出裕章氏の見解では、太平洋の汚染に関して次のようなどちらかというと楽観的な見方がされている。人民新聞オンライン2014/11/23の記事 「高コストの原発導入は、核兵器技術を獲得するため 原発再稼働は、実に愚かな選択」から引用

「これまで人間が放射能で地球を汚染してきたことに関しては、様々な経験があります。福島第一原子力発電所の前には、チェルノブイリ原発の事故が1986年にありました。その前には1950~60年代にかけて、膨大な大気圏内核実験が行われています。空中で核爆弾を爆発させて、放射性物質をばらまいた訳です。

福島原発事故でばらまかれたセシウム237は、日本政府の公式発表によると、広島原爆168発分だと言っています。それだけでも大変な量ですが、大気圏内核実験はその60倍です。それが太平洋・大西洋、大陸にも降り積もって、地球を汚染したのです。

ですから、福島事故で海へ流れ出ていっている放射性物質は、正確な評価ができないのですが、セシウムについては、大気中に放出したものと海に放出したものはほぼ同等程度だろう、と思っています。

そうすると、大気中に放出したセシウム237は、大気圏内核実験で既にその60倍をばらまいて地球上を汚していた訳ですから、全地球を平均的に汚染したとすれば、大気圏核実験のほうが多いのです。太平洋は、これから福島から放出される放射性物質で汚れていきますが、これまでの汚染を超えることは、たぶんないと思います。」