引退後をどう生きる I (2006/2/26)

みずほ証券のジェイコム株誤発注に乗じて何十億円も稼いだ市川市の個人投資家はLDショックで数億円損を出したと伝えられています。何十億円も儲ければ神経をすり減らす相場師は止めて現金を手に入れ、一生優雅に生活する選択肢もありそうに思いますが、日本人は勤勉なのですね。

私の株式投資の目標は最低生活費を稼ぐことですから、別に5年で5倍などという高い目標を目指す必要はないのですが、毎日相場を眺めているとついつい欲が嵩じてきます。そうです、枯淡の境地には程遠いということです。

でも、株式投資はお気軽に楽しみやお遊びでやれるものでないことも確かです。相場参加者はプロ、アマを問わず、相場分析、銘柄研究、リスク管理に技量を磨き、シノギを削っています。短期的にはゼロサムゲームですから、新興企業のインチキ経営者に金を騙し取られたり、リスク管理が甘く大きな損を出したりします。私のことですよ。

一方、株式相場に手を染めていると資本主義経済の中枢部分に参加しているとの満足感が得られます。会社説明会に年配者が多いのはそんなことも背景にあるのではないかと思います。他に社会参加の実感が得られる場がないというわけではないのでしょうけど。

会社を辞めてから若い方と接する機会がほとんどなくなり、同年代以上の方とお話をすることが増えました。自分の関心が引退後の時間の過ごし方に向いていることが大きいからでしょう。このブログで取り上げることも専ら中高年の話題です。

引退後の時間の過ごし方は多様ですね。まだバリバリ仕事をしておられる方もいれば、すっかり隠居生活の方もおられます。

まず、元気一杯の方の例から始めましょう。

(1) 70歳代でも上場企業監査役
東秀オリジンの子会社化を目指していたドンキホーテがイオンに取得株式を譲渡することになりました。六本木の街中ジェットコースターといい、世間を騒がせる話題に事欠かない会社ですが、この会社の監査役はそうそうたる経歴の70代(79〜73歳)が揃っています(詳しくは10/20の記事をご覧下さい)。

官僚OBの監査役の方々は、自らの責務をどう捉えておられるのでしょう。出身省庁に睨みを利かせるのは監査役の役割ではありませんし、このお歳になると現役後輩の顔もご存知ないのではないかと思います。世間の顰蹙を買うことの多い当社の事業展開について、監査役として恥ずかしい思いをすることはないのかと尋ねてみたい気がします。

違法でなければ何をやってもいいというのでは、この前逮捕された若い取締役達とまったく変わらないような気がしてなりません。そう言えば、当社に対する公取委の勧告(2005/3/9)の審判は2/1に第6回の弁論が行われており、決着までなお時間がかかりそうです。

(2) 粉飾発覚引責辞任の経営者76歳
中央青山監査法人現理事長の奥山氏(61歳)は、JASDAQ上場企業「宮」が粉飾決算を行っていた際の担当会計士だったそうです。同氏は2001/7〜2004/7まで日本公認会計士協会会長を務めています。奥山氏は「古典的な粉飾だがやられたらわからない」と述べたとされています。監査法人の監査ってそんなものなんですかね。

話が脇道にそれました。粉飾決算が発覚して経営陣が刷新されるまで「宮」は創業者である鈴木氏(76歳)が会長を務めていました。「宮」は公私混同や綱紀の面で上場企業とは思えない、個人経営企業さながらの体たらくです(詳しくは12/71/14の記事をご覧ください)。遊戯業が本筋のようで、地方企業は実態がどうもつかみづらいという難点を実証してくれました。

いくつになっても元気なうちはあくまでも現役で頑張る・・・立派なことのように思いますが、自分自身の体や精神のコントロールが効かなくなっていることも多いわけで、経営の第一線から身を引くタイミングの判断を誤るとせっかくの功績が台無しになってしまいます。

でも考えてみれば、上に例示した方々は60、70を過ぎてもまだ「引退」しておらず、なお「現役」と言うべきなのですね。「生涯現役」の方については、なによりも「引退の仕方」が問題ということになりましょうか。

引退後をどう生きる II (2006/2/27)

(3) 元証券会社代表取締役
上記(2)の奥山氏と鈴木氏については、講演などでお話を伺ったことがあります。しかし、そういう一方通行の場ではなかなか人となりはつかめません。やはり酒でも飲みながら伺った本音が味わい深いことが多いです。

先日友人の紹介で、現役時代に証券会社の代表取締役をされたA氏のお話を伺う機会がありました。証券界の内幕話はとても面白く、また勉強になりました。証券会社はとにかく株を売らなければ手数料が入りませんから、企業分析など二の次三の次、東大経済学部出身のエリートでも、入社翌日からとにかく手数料を稼ぐことしか考えておらず、20年、30年経つと頭は空っぽで、部下を叱咤激励することしかできなくなるとのこと、なるほどと納得しましたが、これはあくまでも一昔前の話です。

証券界出身でベンチャーキャピタルを起業したり、新興企業子会社のトップを務めている方はとにかく自信家ですが、そういうヘトヘトに疲れるような激しい競争の中を生き抜いてくれば、当然なのかもしれません。LD事件で証券会社出身の若手が不正の中心的な役割を果たしているのは、証券界の「常識」を基準とすれば時としてそういう逸脱もあるということを示しているようです。

証券界は規制緩和で外部には分かりにくい仕組みも自在に駆使できるようになっています。もし今なお自己規制が効かない人達が多いのだとしたら、とんでもないおもちゃを与えてしまったのかもしれません。

話をA氏に戻します。A氏は本流から外れていたこともあり、少しはクールに自分の職場を眺めておられたようです。退職後は仲間に頼まれて投資クラブを主宰しています。この半年ほど銘柄研究など必要ない相場が続きましたので休止していたそうですが、相場の乱高下が激しくなり相場研究が必要になったので近く再開するとのことでした。

私よりかなり年長ですが、頭はシャープでインターネット関連のビジネスも暖めておられるようです。ご自分でもGoogle検索などお手の物、以前このブログで紹介した「きっこの日記」もご存知でした。何よりも驚いたのは、今でも奥様とのスキンシップはバリバリの現役だそうです。

私は求職活動をした際に訪問先のオーナーからレビトラをもらったことがあります(9/28の記事ご参照)が、会社の経営者とか仕事や社会活動で忙しくしておられる方は、概してあちらもお元気のようですね。そして互いに頑張ろうという連帯感からこの種の薬を融通しあうこともよくあるようです。若い頃にイヤラシービデオ貸し借りした時のような後ろめたい感じもなく、とてもオープンです。

確かに私らの年齢になるとあまり激しい運動はできませんし、酒の量も落ちますからあちらの行為がリフレッシュに多大な効果を持つということは言えますね。英雄何を好むとかいう俗諺もこの歳になると良くわかります。その人の生活全般の活力につながるものと考えれば、別に英雄でなくとも同じです。性的能力を維持するための自己管理も生活力の一部です。

老人ホームに入っても世話を焼いてくれる若い看護士のカラダにさりげなくお触りするような爺さんは、なかなかボケないともいいます。作家の水上勉氏は亡くなる直前まで見舞いに来た人に煩悩が消しがたいものであることを語ったとのことです。早々に枯れるのもいいし、死ぬまでそれで悩むのもまた退屈しなくていいのかなとも思います。

安い居酒屋に付き合い、自分を飾ることもなく、思うところ感ずるところ、期するところを忌憚なく語るA氏に引退後も活気のある暮らしぶりを感じました。A氏の場合は、引退後も様々なルートを通じた人との付き合いに前向きであるという点が特徴です。

引退後をどう生きる III (2006/2/28)

前回は性的活力について触れましたが、私らの年代になると伴侶に拒否されたり、伴侶では機能不全になるからと(口実を設けて)外でスキンシップの相手を求める方も少なくありません。相手をしてくれる方も、中高年男性には将来的な価値を認めていませんから、ドライな付き合いになるようです。

(4) 団体役員の友人H氏
いかんせん、このようなスキンシップはごく一部の例外的な方を除き、中高年男性には大きな経済的負担を課します2006/1/2の記事で触れた友人H氏は、この趣味のために働くのだと張り切っています。数年前、生活のために働いていた職場はストレスが多く、体調不良を訴えていましたが、現在の職場は給料も安いけれどストレスがないのが一番ありがたいと言います。

以前の職場での彼の役割は、談合の中で自社の立場を有利にすることでした。少し間違えば手が後に回ります。本人は家族を養うためには仕方がないと半ば開きなおっていましたが、私は給料が下がってもゼイタクをしなければやっていけるはずだから、機会を見つけて犯罪に巻き込まれる恐れのない仕事に移ったほうが良いと助言しました。

彼の家族は彼の仕事の内容まで知りません。友人が談合の嫌疑をかけられ、それを家族が知ったとき、家族はそこまでして沢山稼いでこなくても良かったのにと言うはずだと説得しました。友人は無事転職できましたが、転職後は手のひらを返すように、これからは自分の趣味のために働くと宣言し、風俗業界の最新動向をよく教えてくれました。

そう言えば、最近彼からそちらの趣味に関する話を聞いていません。海外旅行のお誘いもなくなりました。私にとっては彼が元気にしているということだけで十分ハッピーです。

私にレビトラを分けてくれた方も、確か良く海外に出かけているようです。海外出張は工場の視察が目的と聞きましたが、風俗や文化の研究も目的の一つなのかもしれません。

海外組のお二人も、対人関係に関しては積極的、前向きです。人との会話が一番頭脳を使うのだと言いますし、初対面の人と会って話すことはそれなりの負担を伴いますが、お二人ともまったく苦にしておられないようです。

(5) 職場の先輩S氏
現役時代の所属組織にすっぽりはまっていた人は、OBになってからも現役時代の延長線上で活躍の場があれば良いのですが、そうでないと自分の新しい生活の「張り」を見出すことが難しいようです。その点では「人との接点」のある趣味や活動を続けていた人は、すぐに重点移行ができて第二の人生を楽しんでいるようです。

職場の先輩S氏は外国人に日本語を教えるボランティア活動をしています。もともと英語がお得意でしたので、引退後はそれを使った人のためになる仕事をしたいと、日本語教師養成講座を受講されました。もう数年経ち、本国に帰った教え子が日本語を使って活躍し始めています。

決して饒舌ではなく、とつとつと語られる感じでしたが、むしろそれが良かったのかもしれません。スポーツに、日本語教師にと忙しい日々を送っていると、便りにありました。詳しくは1/3の記事をご覧ください。

(6) かつての同僚M氏
60歳を過ぎてから自分の趣味に専念し、その成果を世に問う方もおられます。75歳で新人作家デビューした加藤廣氏はその典型でしょう(2005/12/25の記事ご参照)

私のかつての同僚も趣味で第一級の成果を上げています。駅のエスカレータで前方宙返り1回転半してしまった日は、その方のお祝いの帰りでした。

M氏は現役時代は物静かな雰囲気を持つ方でしたが、引退後は再就職で働き続けながらそれまでの趣味であった盆栽作りに精を出されたそうです。ところがやはり寄る年波には勝てず、友人の助言で腰を痛める心配の少ない菊盆栽に転向しています。

ご存知のとおり盆栽作りは長い年月を要しますし、置き場所も取りますから趣味の園芸では限度がありますが、菊盆栽なら育ちが早いため技術さえあれば、数年でプロ級の作品を作り出すことができます。M氏からこのところ毎年コンクールで入賞したとの知らせをもらっていましたが、今年はついに最優秀賞を獲得との報に接することができました。

一緒に仕事をさせてもらったのは20年近く前になりますから、当時の同僚の皆さんが元気にされているか気にもなっていました。そこにこの知らせです。長老にお願いし、地元の皆さんに声をかけてもらって何十年ぶりかの顔ぶれが集い、お祝いの会を催すことができました。

レディはエスカレータ駆け上り禁止 (2006/3/2)

私のレディメル友は、世間の普通の妻だと思うんですけど、お宅ではいかがですか?

> 新年会に行ったら日にちを1日間違えて、前日に終わっていました。
> こんな事をしてしまったのは初めてですが、これからこんなヘマが増えてくるのでしょうね。
はい、どんどん増えますね。私の経験からすると。
勘違い、思い違い、見間違い、物忘れはもはや終生の友です。
こういう友達でもいなければ、あと何年生きられるかは別として、いつまでも人生の失敗体験を引きずっていかないといけませんからね。

> 行くまでは体力が持つかどうか心配していましたが、何の事はなかったです。
> ドンドンエスカレーターを駆け上がりましたよ。
そんな危険な!
エスカレータを駆け上がったりするのは、レディにふさわしくありませんよ。

> 後は旦那の職探しですが これはどうなるか 一番の心配事ですね。
大丈夫ですよ。
節約上手、家事上手な奥様がおられるんですから、しばらく収入がなくともやっていけますよ。

> 旦那の健康診断の結果を聞いてきました。
> 堂々の糖尿病です。
> 数値が200を超えていましたので
> これは痩せるのを待っている段階では無いと言うことでした。
糖尿病は怖いですよ。
友人が糖尿で足の指を切りました。
週1回の透析がとても疲れるといいます。
悪化すれば、稼ぐこともできなくなりますからね。毎日体を動かすのが仕事になりますよ。

> 早速、知合いに頼んで大学病院 紹介してもらうつもりです。
> もう まいりました。
透析をする開業医は、それぞれ大病院の系列下にあり患者を大事にしてくれます。
一生通ってくれますからね。一生ですよ!
基本は食事療法、運動療法です。
今日から始めないといけませんね。
ご主人は今は勤めておられないから、いくらでも新しいことに挑戦し良い生活習慣をつけることができます。
体を動かすのが気持良い季節になっていますし。

> 前立腺の数値は全然問題ナシでした。
それは良かったですね。
でも予防のためにはねぇ・・・。
デブは嫌ならそれでしょうがありませんけど、ご主人をデブにした最大の責任は主婦にありますからね。
面倒見てあげなくては・・・。
まあ、納豆ですかねぇ。

自分では長年続けてきて何も問題ないと思っていたことでも、その陰に大きな危険が潜んでいることは良くあるんですね。生活習慣病もそうですし、エスカレーターの駆け上がりや駆け下りもその一つだと思い知らされました。 下の画像は先日エスカレーターで転倒落下した際にできたズボンの傷です。ステップの溝に引っかかって切れています。

足の傷はそれほど深くありませんでしたが、もし他の方にぶつかっていたら大変なことになったと、今更ながらぞっとします。 親爺の体に傷跡ができる程度ならまだしも、若い方の顔や足を傷つけたり骨折させたりしたら取り返しのつかないことになります。

エスカレーターを駆け上がったり、駆け下りたりすることはやめましょう。
万一、自分が転んで他の方にケガをさせたりすると、巨額の損害賠償を請求されることになります。

主婦が惰性で長年続けてきたことによる被害は、泣き寝入りするしかありませんね。そういう妻をもらった本人の責任なんですから。

引退後をどう生きる IV (2006/3/3)


M氏の作品です。

幽玄に見えますが、陽光に映えれば鮮烈に耀きます。一輪がテレホンカードほど、全体では人の半身ほどで華やかです。晩秋に品良く、大きく花開く・・・そうありたいとの思いが訴えかけてきます。確かな技が菊花にそれを語らせています。

M氏は20代の頃に茅誠司東大学長の講演を聴き、以来ボランティア活動の意志を暖めてきたとのことです。現在は菊盆栽の会の名誉職的な会長を支える副会長としてメンバーの指導に忙しくしておられるようでした。若いときからの趣味である盆栽作りの経験、現役時代の仕事で磨かれた社会性、ご本人の固有の奉仕精神からして、ごくごく自然な活躍の場です。

20年ぶりの方もおられるかつての同僚は少々白いものが増えたりはしていましたが昔の雰囲気そのままに皆さん意気軒昂です。皆さん地方の有識者ですので地域の期待も大きく、活躍の場がおありのようでした。

地域住民の流動性が高く、職場以外の人間関係が希薄な都会とは異なって、地方では引退後も自分の社会的な存在を確認することができ、一気に老け込んだりすることがないのはうらやましい限りです。

中でもM氏は白髪になっておられましたが、一癖も二癖もあるかつての同僚の中では群を抜いて上品な雰囲気を漂わせていたことは、私だけの感想ではないと確信しています。禿に無精髭と一番容貌が崩れていたのは私であることは、もちろん認めた上ですけど。