測定地上高の違いが測定値にどう出るか

 

2014/12/15、読者から大変興味深い動画を教えてもらった。2014/9/6 千葉県松戸市松戸②YouTube

松戸市の江戸川堤で撮影された測定結果で地面直置きで3μSv/h、地上1mらしき高さで0.46μSv/hを示している。
読者は、弱いγ線が多数発せられているのではないかとの疑問を呈していた。

筆者もこれを見てびっくり。簡易ベータ線の測定法が根底からひっくり返ってしまう。



測定場所は松戸駅に近い江戸川の堤防。緯度経度では下の地図のバルーンの場所だが、動画を見るともう少し南の提内地、堤防の内側で測定されたもののようだ。

土壌分析結果も付されている。


セシウム合算12,760ベクレル/kg。すごい値だ。平米829,400ベクレル。汚染状況の物差しで見ると、空間線量率は約3μSv/hになる。動画の地表での測定値は2.99μSv/hでぴったりだ。だが、地上1m程度と見られるところで0.46μSv/hとなっており、えらく低い。なぜだろう。

答えは簡単だ。この高い線量率は、点線源を測ったものだからだ。辺り一面12,760ベクレル/kg程度の汚染があれば、地上1mでも3μSv/h程度出るはずだが、強い汚染部分は一部だけのため空中で測定すると線量率が下がる。

空中での測定値から平均密度を逆算すると、127,000ベクレル/m2、濃度は1,953ベクレル/kg程度となる。常総生協の土壌調査でこの辺りは10万ベクレル/m2超となっている。推定土壌密度は、これを少し上回る程度で大きな齟齬はない。

読者の指摘してくれた「弱いガンマ線」の問題は確かに気になるところだ。セシウムでもエネルギーの少ないガンマ線はあるし、ウラン系列の鉛210などにもあるらしい。簡易な測定器でどこまで拾っているのかは疑問だが、「弱いガンマ線」が地上1mまで届かないとなると、汚染状況の物差しは根底から覆る。それほど多くないと見てよいのではないか。

園庭などで高さを変えて測定すると、確かに常に差がある。次は21世紀の森と広場の空間線量率測定結果を地上高別に5回の測定値の移動平均を示す。常に5cmが最も高く、1mが最も低くなっている。

上のデータを地上1mを基準とした比で示すと、地上50cmでは地上5cmの1.1倍、地上1mでは約1.3倍になっている。最近時点ではこの比率が下がっているが原因は分からない。地上高を変えて測定することに不可避的に伴う原因があるのだろう。


次は、この問題を考える上での単純化された設例だ。

ある園庭が真平ですべての土壌に表の飛程を持つガンマ線を毎秒各2本発射する放射性物質が均等に分布しているとする。地上5cmでは上向きに発射された放射線のすべてを捕捉するから毎秒の入感数は7。次に地上高50cmでは離れた場所からも同じ割合ではいるはずだから入感数は7になるはずだが、遠く離れた場所から発射されたガンマ線は一部届かなくなり入感数は6、地上1mではさらに届かない範囲が広がり入感数は5になるとする。

地上高が高くなると、地上高5cmの場合に入感していた測定位置の真下にある場所から発射されるガンマ線は、横に逸れて入感しないものが多くなっている。

かくして、地上高1mでは、5cmの場合に比して入感数が減り、表示される空間線量率は低くなる。そういう仕組みだろう。なお、ガンマ線の飛程分布を知りたいが、まだ資料が見つからない。

 

もう1箇所の事例を見る。

※  neko-aii @neko_aii 氏の2014/12/14のツイート
2012年6月10日 茨城県ひたちなか市 国営ひたち海浜公園 『みはらし広場』の一角 地表:5.56μSv/h 空間(胸の高さ):0.65μSv/h 福島第一原発からの距離は約120km 測定器は、ウクライナ製。ガンマ線のみを測定 https://www.youtube.com/watch?v=4hCy3LOCsWM

動画には、ECOTEST MKS-05使用、ガンマ線のみを測定したとある。ECOTEST MKS-05はベータ線も検知できるはずだが、遮蔽したのだろう。

胸の高さで0.65μSv/h、ほぼ5μCi。地表の一部に150万ベクレル/m2の濃度があるが、周辺を均せば、18万ベクレル/m2相当と推定される。これは、2012年6月10日の測定。松戸市の江戸川土手で83万ベクレル/m2が見つかっているくらいだから、150万ベクレル/m2に驚くことはない。

ベータ線を入れたら、どれくらいになったのだろう。



 

 

 


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